星野佳路 「観光には国と国との関係を変える力がある」

J-WAVEの日曜22時からの番組「J-WAVE SELECTION」。毎月第2、第3、最終週がレギュラープログラムで、第2日曜は文化人類学者の竹村真一がゲストと共に進むべき未来を提言する 「SMBC EARTH TALK」、第3日曜は音楽家の小林武史が東日本大震災の被災地を訪れ、復興の現状をお伝えする「Hitachi Systems HEART TO HEART」、最終日曜はベンチャー企業や起業を志すイノベーターを支援する「INNOVATION WORLD」をお届けしています。

7月10日にオンエアされた「SMBC EARTH TALK」(ナビゲーター:竹村真一)には、株式会社星野リゾート代表の星野佳路さんが登場。観光から見るインバウンド、アウトバウンドの未来像について、竹村と語り合いました。

いま、日本の観光産業が注目されています。現在23兆円、日本で5番目、金融業界と同じくらいの規模を持つ産業となった観光産業。また、世界中には13億人の観光客がいて、観光業界は「成長を約束された業界」と言われているそうです。日本の観光産業に新風を吹き込み、業界をけん引してきた星野さんに、日本の観光産業の課題や可能性について話をうかがいました。

星野リゾートは長野県軽井沢町にある旅館からスタートし、現在に至るまでに国内外に35の施設を展開。さらにこの後も、新施設オープンが予定されています。1991年に外見も古くボロボロの旅館を受け継いだという星野さんが、経営者としてまず注力したのは優秀な人材の確保でした。

「都市型ホテルと比べたときに、リゾートホテルというのは泊まる“理由”がないんですね。私たちのようなリゾートホテルというのは、泊まる理由を作ることがすごく大事で。その泊まる理由を作るのに一番重要なのは実は人材です。最初の3年間で一番苦労したのはリクルーティングでした。そんなに高い給料を出せない時代に、優秀な人材に長野県に移り住んでもらって、長く仕事をしてもらう。そのためにはどうしたらいいだろうかと考えたとき、仕事を楽しくするしかないんです。『いかに毎日出社することが楽しい会社を作るか』ということが、私たちがスタート時に取り組んできたことでした」

当初はリクルーティングしようとした人たちが見た瞬間、引いてしまうほどのボロボロの旅館だったと言います。そのため、星野さんが取った行動は、まずは軽井沢の旬な食材が並ぶ「ツルヤ」というスーパーを最初に見てもらったのだそう。その後、職場をサラッと見せて、いかに軽井沢での生活が素晴らしいかを印象付ける。そんな工夫の蓄積で、仕事を楽しんでもらえる優秀な人材を確保してきたのだとか。

そして現在、星野さんは国内を旅行する若者の減少など、日本の観光業界の課題を挙げながらも“観光業界の未来”を次のように語りました。

「国と国との関係を変えていく力があるというのが観光だと思うんです。国と国との関係がうまくいっていない国であればあるほど、本当は観光で民間レベルの交流をしたほうがいいんです。そうすると“日本政府は嫌いだけど日本人は好き”という人が現れる。また、その逆の関係も築ける。その世論が大きくなっていくと、実は政治も変わらざるをえない。そのぐらい、観光というのはパワーのある産業なんです。また、それを実現していくというのが私たちの役割だと思っています」

ボロボロの旅館から世界へ――。観光産業がグローバル化し、規模がどれだけ大きくなっても、結局のところ大切なのは、一人ひとりの人間同士の繋がりなのかもしれませんね。

【関連サイト】
「SMBC EARTH TALK」オフィシャルサイト
https://www.j-wave.co.jp/special/earthtalk/

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